毛玉河原の落書(新)

受験勉強プロデューサー「けだま」こと武田真樹のブログ。

Q&A 年代暗記はした方がいいですか?

「年代暗記はした方がいいですか?」

これもFAQですね。
答えは大絶賛でyesです。

年代をたくさん暗記すればするほど、
素人つまり歴史学者以外の人間にとって、頭の中で
歴史像をいつでもきれいに正確に描けるようになっていきます。
断じて申し上げますが、テスト(入試)で
「この出来事は何年ですか?」
という直接的な設問に答えるためではありません。

 

じゃあどういうことかというと、
まず日本史の例を挙げます。
(世界史はその後で挙げるので世界史選択者は読みとばしてもよい)

例えば
8世紀の土地制度について説明しなさい」(日本史)
といわれたとき、
701年大宝律令710年から奈良時代
723年三世一身法、743年墾田永年私財法、
794年から平安時代だな、
「あ、じゃあ律令成立からだいたい奈良時代の間ということか」
「じゃあ三世一身法とか墾田永年私財法らへんのことを書くんだな」
と分からなければ考えようがない。

あるいは、
11世紀に開発領主が現れ、地方の土地制度は大きく変化する」
が、
その間の政治は?」
とか、分野の違うことを聞かれたらどうだろう?

例えば1016年藤原道長摂政とか、1086年白河院政開始
とかが浮かんでくれば、ああ摂関政治全盛期から、
院政が始まるくらいなんだな、と自信をもって言えるだろう。

また日本近現代史の複雑な歩みを、
ひとつも年代を知らないで覚えるのはなかなか厳しい。
近現代になると教科書は外交なら外交、経済なら経済と、
テーマ別に縦にやっていって、時間軸は行ったり来たりするので、
我々素人が数字の助けなしに、
イメージだけで物事の前後関係をつかむのは限界があるのだ。

いや、一つのテーマ内でも、そう何でもかんでも
初めからしっかりストーリーで認識しようというのは難しい。
そんなとき、年代である。
民撰議院設立建白書佐賀の乱台湾出兵
全部1874年である。
私はこれ、暗記しているが、初めは自然に憶えたのではない。
私は日本史だけをやって食っている学者ではない。
自慢じゃないがそういう意味では素人だ。
自然に憶えるほど日本史漬けじゃない
受験生と同じ。語呂合わせで憶えた。

このように、まず機械的に(無機質に)暗記した上で、
「ああそういえば、明治六年政変(1873)で征韓派が追い出されて、
翌年すぐ板垣は動いたんだな、
でも江藤は士族反乱にすぐ巻き込まれちゃうんだ、
政府も政府で、征韓論を封じたくせに、
翌年にはもう外に兵を出したのか」、
というストーリーによる認識、
有機的な認識に裏付け・確信を持つ
もちろん有機的な認識が王道・優先なんだけれども、
数字覚えがそれを導く助けになって何が悪い。(笑)

 

次に世界史の例も挙げてみます。
(日本史選択の人は読みとばしてもよい。)

世界史に年代暗記が必須であることは、
日本史よりも納得しやすい。
オリエント→ギリシア→ローマ→インド→中国のように、
世界史は地域別に「縦」にやっていき、
ある程度いったら「横」に飛ぶ。
世界史は、時間軸上を常に行ったり来たりすることを
宿命付けられた科目なのだ。
年代の助けなしに全体像をつかめというほうが無理だろう。

「世界史」をやってるわけだから、
それなりに横のつながりも認識しなくてはいけない。

例えば、ギリシアのポリスが栄え、
それが最終的にヘレニズム時代に行き着いたと思ったら、
横からローマが突然、ヘレニズム3国を滅ぼしにやってくる。
ローマはそれまで着々と力をつけてたんですよ、と言われて、
授業はそっちの話にいくが、
「それまで」のローマ史を具体的に、
ギリシアと並べてイメージできるだろうか?

普通ならできるわけがない。
教科書のストーリーでギリシアのポリスと都市国家ローマは
ほとんど絡まないんだから。

そんな時、ローマでエトルリア人の王を追い出して共和政が成立した
のは前509年(伝承だが)ということを憶えれば、
あ、それはギリシアではクレイステネスが改革を始めた前508年
大体同じだなあと気づくわけだ。

また、ローマがギリシア人のタレントゥムを陥落させ、
イタリア半島統一を完成していった時期。
あれは「アレクサンドロスより後ですか、前ですか
と聞かれて、自信をもって答えられますか?

タレントゥム陥落の年代なんか憶えなくていいけど、
それがポエニ戦争スタートのちょい前だったな
イタリア半島統一してから属州拡大なんだから)、
と考えれば、ポエニ戦争前264年は憶えてなくちゃいけないから、
そのちょっと前なんだなと推測できる(実際は前272年)。

アレクサンドロス東方遠征開始前334年で、
その後10年くらいで死んじゃうので、
ローマのイタリア半島統一は、
彼がいなくなってから50年後くらいなんだな、
と、実感を持って分かるわけだ。

じゃあついでに、それとローマ国内との関係で言うと、
身分闘争の終了たるホルテンシウス法制定は、
イタリア半島統一、ひいてはポエニ戦争の、前?後?

ホルテンシウス法の前287年は憶えたほうがいい。
その15年後に半島を統一した、ということだ。
こうなれば、
「ローマは、国内で身分闘争を進めながら
イタリア半島統一を進めていたんだ」
というストーリーの認識、
有機的な認識自信を持ってできる。
歴史は、もちろんちゃんとストーリーで、
有機的に認識することが王道・優先にはなるけれども、
数字の助けを借りればリアリティが増すわけだ。

設問と言うことで言えば、
前3世紀ローマの国内情勢と対外発展を説明せよ。」
なんて言われても、上のような年代認識があれば迷うことはない。
仮にこんな問題があったとしたら
(単に文脈に合わせて思いついただけです)、
リキニウス法は入れてはいけないわけだ。前367年だから。

日本史世界史問わず、論述に年代暗記は絶対不可欠です。

 

では、実際にはどう取り組むかということだが、
年代を憶えろといったからといって、
年代を憶えることそれ自体にそんなに時間を割いてはいけない。
年代ばかり憶える時間などとらなくていいし、
そのためのアウトプット練習など(単語練習のように)
しなくてもよい!(時間がもったいないしさすがに不毛だ。)

そうではなくて、
なるべくたくさんの年代が載っている年代暗記本を持っておき、
それなりに大きな出来事に関しては、
授業なり自習なりで学習したときに、
いちいち年代語呂合わせをチラ見して確認するようにするのだ。

いくつかの、明らかに重大な年代(1945年とか)については
まあ憶えようとしなくてはいけないが、
それにこだわるよりも、
とにかくその時学習した範囲の年代暗記本のページをまとめて見て、
記載があるものは全部見る。
「なんじゃこれ」「くるしー」とツッコミを入れながら、
その中で自然に印象に残るものをどんどんつくっていく。
それらが頭の中で歴史を組み立てる軸になっていくだろう。