毛玉河原の落書(新)

受験勉強プロデューサー「けだま」こと武田真樹のブログ。

世界史【論述対策】の王道一択

世界史論述の市販の教材としては、
決して他の教材がいけない、というのではないのだが、
以下の2冊が他の追随を許さない長所を有するので、
特段の事情が無い限りこれで間違いがない。
まず上の1冊。
それだけでもよいし、そこから次の1冊へ進むもよし。
それ以外にはもう過去問の類しかやることはない。
これが世界史論述対策の王道だ。
要するに一択×一択=一択だ!

 

まずこれ

 平尾雅規『世界史B論述問題が面白いほど解ける本』

世界史論述の典型的なテーマを厳選し、教科書で習う順に掲載してある。
第1回古代オリエント世界、第2回古代ギリシア世界…という感じで、
第55回戦後のアジア・アフリカ諸国、第56回戦後の東アジア、
そして第57回同時代史まで全57回で構成されている。
それぞれの回には、50~100字程度の「小論述」が3~4題くらいと、
200~400字程度の「大論述」が1題掲載されており、
各自の現状や志望に合わせて、習った順に進めていくことができる。

最大の売りは、最初の9回(古代)の各回で解説される、
「タイプ別論述対策」1~9。これは、
1:語句・用語説明、2:比較、3:特徴その1、4:特徴その2、
5:経過説明、6:原因・理由・背景、7:変化、
8:結果・影響・意義その1、9:結果・影響・意義その2
で構成されており、
見ての通り、論述問題の要求内容をタイプ別に9種類に分け、
それぞれどんなふうに考えてどう書けばよいかを教えてくれる。
例えば「比較せよ」と言われたらどんなふうに構想メモを書き、
どんな答案にすればよいか、
非常に分かり易いたとえなども交えて具体的に解説してくれる。
あまりにも分かり易く明快で、
これさえあれば予備校の全ての論述対策の授業は、
平尾先生本人の授業も含めてほとんど不要になるのではないかと
心配になるほどだ。

そして各設問の解説も、
この「タイプ別論述対策」で説かれた方法論を適用・実践する
というかたちで書かれている上に、
実際に取り組む段階で受験生が疑問に思うであろうことを
きっちりケアしてくれる、「痒い所に手が届く」ものだ。
小さい字で書き込まれた注が、著者のマメな性格を伺わせる。
この本が存在する限り、
そして入試がよほど根本的に変わらない限り、
本格的な論述対策を必要とする国公立受験生などは、
もう全員この一冊をやる、で間違いない、
文字通りのバイブルである。
もっと網羅度の高い秘伝の教材を
個人的に入手できることなどはあるだろうが、
市販の教材ではこれに勝るものはない。
この教材は確かに数学の『青チャート』のようにヘヴィだが、
重過ぎると感じる人は、他の教材をやるのではなく、
やり方ややる問題を工夫すること
(全て書くのではなく口頭で暗唱するとか、小論述のみ取り組むとか)
をお勧めする。
最初の「タイプ別論述対策」を読むだけでも収穫だ。
これがある限り、他の教材を薦める理由がない。

…というこの本は、2012年に発売されたのだが、
それから10年弱の年月を経た2021年頃には、
どうやら絶版になってしまったのか、入手困難になっていた。
しかし2022年3月末に、kindle版が発売された。
今のところそれしかないようで、
受験生はタブレット等で勉強することになるが、
背に腹は代えられぬ。
しっかりノートをとって臨んでください。


からの…東大・京大・一橋など最難関受験者はこれへ進む。

中谷臣『世界史論述練習帳NEW』

旧版は旺文社から2001年に出版され、
その後2009年に出版社を変えてこの『NEW』が出たが、
かれこれ20年以上の間、元祖不動のバイブルの地位を守っている。
この本で合格した受験生が今や東大などの教官になっているというわけだ。

『論述面白いほど』がある今となっては、
東大・京大・一橋など最難関国立大学の大論述対策(専用)教材
と言ってしまってもいいかもしれない。
(勿論、それ以外の人も読んでみる価値はあるが。)

全体は8つの「論術」による章立てになっていて、
これは『論述面白いほど』の「タイプ別論述対策」と似ている。
「まとめよ」「過程をのべよ」「変化をのべよ」「関連をのべよ」
「影響をのべよ」「意義をのべよ」「特色をのべよ」「比較せよ」
の8つである。
このように論述問題の要求の方向性に焦点を当てた所が
おそらくそれまでになかった、この本の革命的な点であり、
『論述面白いほど』もこの本の影響を受けていると思われる。
『練習帳』の内容を、より多くの受験生に分かり易いように
ポップに嚙み砕いて解説したのが『面白いほど』という感じ。

この『練習帳』の解説の文体はより高尚で、
「スタサプ的」な万人向けの語り口ではなく、
多少の個性、含蓄、クセがある。
答案例も、受験生がそれまでに見てきた無難なものではなく、
要求にストレートに答えるための独特な言い回しがあったり、
内容的にも教科書で万人が学んできたものを超えるものが
盛り込まれていたりもする。
だが東大・京大・一橋を目指すなら、
これについていく力量が欲しいところだ。

扱われているのは、8つの「論術」を具体化した、
東大・京大・一橋(たまに阪大)の大論述41題とその解説。
各章の最初には練習材料としてオリジナルの例題が少々。
41題を、各自の残り時間などに合わせて、
1日1題とか、週に1題とか決めてやっていけばよい。

各設問では、まず、著者の誘導で構想メモを作り、
次に生徒の答案例の添削が示され、
最後に著者の解答例が示されている。
構想メモのあと、自分の答案を書くとよいだろう。

付録として、「東・京・一・筑」
つまり東大・京大・一橋・筑波の過去問集。
これは解答例はなく、ヒントだけ。
但し、著者にメールを送ると解答例を送ってくれる。
もう一つ別冊で、「基本60字」という小論述テーマ集。
小論述とはいえ地域別に279題あり、
実際国立で出題された、まあまあ難しいテーマもあって、
やるとけっこう大変だろう。
『論述面白いほど』を経ている人は後回しでもよいが、
余裕があればやりたいところ。
口頭で暗唱するのもよい。

最後に、東大受験生は、
著者が電子書籍で出している『東大世界史解答文』を、
著者のサイトである世界史教室に書かれた手順で
購入することをお勧めする。
これに入っていない新しめの問題だけ、
上記の要領で解答例を送ってもらうこともできる。